大宮町3丁目

press to zoom

press to zoom

press to zoom

press to zoom
1/4

物件所有の母は自身も麻雀が得意な方で、雀荘を経営していました。母が介護施設入居に伴い、長期で空き家になる駅チカのこの物件を活かしてみたいと思いました。

残置物は撤去されて雀卓と掘りごたつの名残があるのみですが、レトロな雀荘と直結した生活空間がなにか活用できたらいいかなとかんがえています。

​(建物管理者/鈴木元紀)

20220320_162139.jpg

飯沢未央(いいざわ・みお)

 

多摩美術大学美術学部情報デザイン学科卒業
多摩美術大学大学院デザイン専攻情報デザイン研究領域修了
生命についての、哲学・科学・美学的リサーチと考察を背景として、電子デバイス、空間インスタレーション、パブリケーションなど、多彩な作品を制作している。
最近はバイオと民俗学の接続に興味を持ち、メディア問わずアウトプットを展開中。本にまつわる事象にも興味を持ち、メディア何でも書店「TRANS BOOKS」の運営・企画も行う。https://iimio.com/jp

1YEtAT0w_edited.png

澤さんが声を掛けてくれた

2月初旬、今回のプロジェクトのキュレーションを手掛ける澤さんから突然のメッセージ。忙しい時期だったこともあり、内容をちゃんと咀嚼できていないのに関わらず、声を掛けてもらった嬉しさから二つ返事で承諾。捉えどころがない案件だなと思ったものの、自分が興味があったことと空き物件を掛け合わせることの可能性を感じ、私個人でやろうとしていたプランをいくつか澤さんにお話した。澤さんはこちらの提案を面白がってくれて、少し安心した。

 

顔合わせ

オンラインで参加メンバー顔合わせ。今回の事業の中心人物である、山田さんが「中期的な」目線で何かできればと話していたことが印象的だった。このプロジェクトは、特に大きな課題があるわけでもない。パッと目立つことをやって、短く終わってしまうのはやはり避けたい。定住してもらいたいわけではなく、ふらっと三島 に来てもらう何かを考えてもらえたら。ということで、何となく今回の三島プロジェクトの意図を理解できた、気がした。パッと出ては消えてしまうものが、特に文化事業周りで度々発生してしまっていることに課題を感じていたので、同じような価値観を持っている人が集まっていることが嬉しかった。

 

そして山田さん、鈴木さんから物件に関するお話を聞いて、この世界の面白さに興味を持った。私の好きな本の一つに岸政彦さんの「断片的なものの社会学」がある。この本で描かれていることは人々へのインタビューを通じて「解釈できない出来事」をめぐる物語なのだが、物件の世界にも通じるものを感じた。頭の中では、色々な人がそれぞれの暮らしを、自分たちが選んだ場所で行っていることは理解できるものの、行われていること全てを完全に理解して処理することは不可能である。そんな言葉で括りきれないような、社会の断片的な面白さが、空き物件にも宿っているのではないかと思ったのである。

 

三島行きが一気に楽しみになった。

 

三島

どの土地もそうだけど、やはり実際に行くことで、場所の空気を実感できる。初日は雨であいにくの天気であったけれど、街中にきれいな小川が流れていて、鴨が気持ちよさそうに泳いでいるのが印象的だった。公園のような特別な場所じゃなく、住宅地の中に自然に鴨がいる場所・三島。

Screen Shot 2022-03-31 at 6.31.38.png

雀荘について

そして今回訪問の目的である雀荘へ向かう。壁に深いヤニの染みが残っており、この場所で作られた時間の蓄積を感じた。私は、こういう時間を掛けて作られた、朽ちた質感にどうしても惹かれてしまう。例えばコケやカビだらけになってひび割れた壁とか、放置された自転車の錆びた感じとか。この壁の染みの情報を丁寧に紐解いていくだけで、面白い物語を十分に引き出すことができそうな気がした。

 

多分この朽ちたものに惹かれる事象については、同じ共通感覚を持った人も多いはずである。廃墟ブームはまだまだ継続しており、YouTubeにもかなりの数の動画がアップロードされていたりするし、空き家や廃虚を専門に撮影する写真家も多数いる。人がいなくなり崩れていく場に対し、散り行く花を綺麗だと思うことと似たような、時間に対する美への意識が働くのかもしれない。

Screen Shot 2022-03-31 at 6.31.47.png

雀荘では、この物件の賃借人の鈴木さん、澤さん、私で、ゆるやかにディスカッションを始める。途中、齋さん、ライター増田さんも参加、更には別の事業で三島に来ていた現代音頭作曲家・山中カメラさん、ダンサー白井真優さんも雀荘にやってきて、色々な話をする。こんな意味不明な集まりが作れるのが山田さん×雀荘の引力なのかもしれないと思った。

 

その後、お世話になったゲストハウスの裏にある空き家を見せてもらった。人がいないというだけで、建物はあっという間に荒れていくから不思議だ。そういえば大学の卒業制作で、空間とエントロピー、そしてヒトとの関係をテーマにしたインスタレーションを制作したことを思い出した。とある先生曰く、ヒトがいないと埃が溜まり、この埃が物質を劣化させていく要因なのではないかと話していたことが印象的だった。

276977379_732909134537726_2164715644189952239_n.jpg

私について

そもそも私は今回アーティストという形で呼んでもらったが、ずっと自分の肩書を決められないでいる。市販のチキンからDNAを取得し、そのチキンの性別が雄であったか雌であったか判定するプロジェクトを立ち上げたり、どんな形の本でも販売するブックイベントを開催したり、新しくできる文化施設の立ち上げに関わったり...自分が何をする人であるのか具体的に言葉にすると、どうも語弊が出てきてしまう。大学生のときに、肩書不明で何やっているか分からない人の方が面白いと思っていて、まさに自分はそうなったわけだが、それはそれでもやもやしたと思いを抱えつつ、活動を続けている。

 

「何となく分かった」解像度で巡る三島

今回のプロジェクトのキーパーソンである山田さんは、本人曰くやっていることは不動産屋ではないらしい。山田さんは面白い人が自然と集まる、とか、気づいたら何か種が生まれている、とか、言語で表現しきれないような、人と場の可能性の面白さを求めている。山田さんはそのために力任せなことはせず、ちょっと仰いで風の流れを変えるとか、モノの配置を変えて印象を変えるとか、窓を開けっ放しにして面白いものを呼び込むとか、そういう力加減で動きを作っているように見えた。風水みたいなものとイメージと近いのかもしれない。私のような曖昧な人間が呼ばれた理由も何となくわかった気がした。三島滞在中はこの「何となく分かった」ぐらいの解像度で色々なものを見て回る経験がとても新鮮だった。

 

巡った場所

2日目は三島大社、渡辺商店、三嶋暦師の館、あひる図書館、中村屋麹店、白滝公園に行く。夜は鈴木さんに連れていってもらったレストランで美味しい洋食を食べ、雨の中、鈴木さんが貸している物件を見に行ったりした。その翌日は山田さんが手がけたAntique doorに遊びに行き、美味しいうなぎを食べ、物件周辺を散歩するなどした。三島の良さを満喫する。

Screen Shot 2022-03-31 at 14.39.20.png
Screen Shot 2022-03-31 at 14.39.35.png

物件の世界

雀荘を始め、ゲストハウスの裏の空き家や、リノベーションされたオープン予定のカフェレストラン、など色々な物件を見せてもらった。そして色々な人とお話できた。カフェレストランは、2Fにパブの入ったビルの屋上にあり、リノベーションの楽しさや工夫溢れる場所だった。物件、やはり面白い。ダイレクトに人とその人の人生に関わる仕事だからだろうか。ドキュメンタリーが好きな人は、きっと物件の世界のことも好きになりそうだなと思った。

 

そしてアイデア

雀荘はサグラダ・ファミリアのよう。雀荘は永遠に解けない問題のような場。もしくは皆で問題を考え続ける場。初日の何の接点もなかった人同士が、なぜか結びついてしまうような、そして何をここでするのが良いかずっと話合って、意見を醸成させて行く場。完成を目指すことが野暮なことに思える、不思議な場所。

 

しかし意見を出す側として呼ばれたからには、抽象的なことだけ残しても仕方がないので、いくつかアイデアを提案してみる。

 

こういうとあるエリアに呼ばれて何かをするプロジェクト、世の中にも多々あるけれど、どこまで土地のことを汲んで形にするのが良いか難しいなと思う。三島の歴史がかくかくしかじかだったので、こういう土地の出来事を作品にします、とか、有名な武将がこの土地にいたから、それにちなんだ作品をつくる、というのもしっくりこない。外から来た第三者がその土地のことを、ものの3日で理解できるはずはないのだし。雀荘も、三島の街も、今住んでいる人たちのためのものなのだから、やっぱ今の地点から多くの人が楽しんでもらえるモノコト、私が面白いと思うことを素直に提案すれば良いのかなと思った。

 

・発酵

都市を流れる汚い水から美味しい日本酒を作るプロジェクトをやりたいなとずっと思っている。ただ三島は水がきれいなので、それだと何のひねりもない美味しい日本酒を作るプロジェクトになってしまう。三島ならではの切り口をどう入れていくか。中村屋麹店のご夫婦はとても良いキャラだったので、巻き込んで何かできたら嬉しい。

 

・演劇

「演劇」というワードは、うさぎ企画の森田創さんとの出会いから。森田さんが三島に来る前にやっていた仕事が今の私の仕事と通じるところが多々あり、色々お聞きしてしまった。特に演劇への想いについてのお話は、聞くことができて嬉しかった。

「演劇」と言われると、ステージがあり客席があり、脚本を元に役者が演技をし、ストーリーが進んでいくもの、という認識が強いかもしれない。でもアートの表現が無限にあるように、演劇も型などなく自由なのだな、と思わせてくれる演出の作品もたくさんあって、そんな可能性を雀荘から探れたら面白そうだなと思った。部室という立て付けにして、舞台は三島の街、としても広がりが出るかもしれない。

 

・たばこ

雀荘で皆さんと話したとき、喫煙所のコミュニティがなくなっている、60歳を過ぎてやりたいことを見つけられず孤独を感じている男性が多いという話題で盛り上がった。タバコは悪いものとして、どんどん排除されているが、あえてコミュニティをつくるために雀荘を三島の喫煙所として解放しても良いかもしれない。

 

・ダーティ図書館

中高年向けの図書館をつくる。タバコもガンガン吸える図書館。お酒も飲める。

 

・アイデアソン

面白いなと思ったのは、雀荘の活用について考えることで、他にも展開できそうなアイデアがいくつか出てきたこと。アイデアを生み出す契機の場としての雀荘。

 

・その他

壁に染みたヤニをバイオ的に分解することで何か面白い情報を発見できないかな、と漠然と思ったりした。空気中の微生物などを取ることで、あの雀荘だからこその情報を拾えたりしないかしら、と思ったりしている。かなり漠然としているけど、人がいた気配や記憶を空気に残った微生物情報から何か調べることできないかなーというのは、前から興味があって、何かできるならあの雀荘で実験してみたい。

 

文字に書き出すと、雀荘に何となしにぼわ~っと人々が集まったあの感じがつぶれてしまうような気がして悩ましい。まずはいきなりゴールを目指さず、少しずつ実験して、雀荘を継いでいけたら嬉しい。

 

最後に

月並みな感想ではあるけれど、三島での3日間はとても楽しかった。この楽しさは予想を遥に超えていて、本当に行けて良かったと思っている。色々な土地を転々とした後、三島を選んだ鈴木さんの気持ちが分かる。もしかしたら、自分も何かをきっかけに三島を拠点にする可能性が出てくるのかもしれない、とも思ったり。風水みたいなことを考えたくなったら、また三島に足を運んでみよう。

275544323_365448262246518_8807368632739483640_n (2).jpg